全館空調とは?仕組み・メリット・デメリットを解説

全館空調は、建物全体の温度や湿度を均一に保つための冷暖房システムです。
各部屋にエアコンを取り付ける一般的な方法とは別物です。
一つのシステムで家全体を心地よい状態に保ちます。

冬の寒さや夏の暑さに左右されず、一年を通して快適な空間を維持できる点が評価されています。
家の温度差を抑えたい方や、ペットやアレルギー対策を重視する方におすすめです。
しかし、導入には費用や住宅の条件など、気をつけるべきポイントもあります。
この記事では、全館空調の種類やメリット・デメリットのほか、どんな方に適しているのかを解説します。

全館空調とは

全館空調とは一台または複数台の空調機で家全体を管理し、隅々まで一定の温度に冷暖房を行うシステムです。
ダクトを通じて送られた空気を、天井や床下から各部屋へ供給します。
家全体に冷暖房が均一に行き渡るため、どの部屋でも温度差が少なくなるのが特徴です。
全館空調にはさまざまな種類があり、住宅の構造やライフスタイルに合わせて、適したものを選ぶことができます。

全館空調の種類

ダクト式

ダクト式の全館空調は、天井裏に設置した空調機から、ダクトを通じて各部屋へ空気を送る方式です。
空調室と呼ばれる、空気の処理を行う専用スペースを設けるのも特徴です。

空調室は、家の大きさや間取りに合わせて必要な空気量を計算して設計します。
空気清浄機能を備えたタイプは、花粉やホコリをフィルターで除去しながら換気することもできるため、アレルギー体質の方にもおすすめです。

床下冷暖房方式

床下冷暖房方式は、床下に空調機を設置し、家の基礎部分の空間を利用して冷暖気を循環させる方法です。
冬は足元を中心に暖め、夏は地面付近の空気を効率的に冷やして各部屋に送り出します。

吹き抜けやリビング階段のある住まいでも、下から上へ空気がゆっくり移動するため、急激な温度変化が起こりにくいのが特徴です。
エアコンの風が直接当たるのが苦手な方には、床下冷暖房方式が適しています。

全館空調のメリット

家中の温度差が少ない

全館空調は、家全体の温度を一定に保つため、各部屋や廊下、トイレ、洗面室、脱衣所などでも温度差が生じにくくなります。
そのため、冬場に暖かい部屋から冷えた場所へ移動する際や、朝起きたときの急激な温度変化を抑えやすく、一年を通して快適に過ごせます。
また、脱衣所と浴室の温度差が小さくなることで、ヒートショックのリスク低減にもつながります。

家中の湿度を調整できるタイプもある

全館空調には湿度センサーが搭載されているタイプもあり、目標湿度を設定すると自動で調整されます。
冷房時は湿度を下げて結露やカビの発生を防ぎ、暖房時は適度な加湿を行い、乾燥による肌や喉への負担を軽減できます。

また、適切な湿度を保つことで、ウイルスの拡散を抑えたり、ダニやカビの繁殖を防いだりする効果も期待できるでしょう。
加湿機能にはフィルターに吸収させた水分を利用して加湿する「気化式加湿」と、熱を加えて蒸気を発生させる「スチーム式加湿」があります。

省エネ性能

全館空調は家全体を一括で冷暖房するため、効率的に運用できます。
全館空調は個別のエアコンを部屋ごとに稼働させる方法と比べて空調の負荷が分散せず、必要以上のエネルギー消費を防ぐ設計になっています。

また、24時間連続運転を行うため、大きな温度変化が起こりにくく、エアコンの起動時に発生する大量の電力消費を抑える効果もあります。
こまめにエアコンをオンオフするよりも、一定の温度を維持するほうが消費エネルギーを抑えやすいこともあり、結果的に運用コストの削減につながります。

室温の安定と快適性

全館空調は家全体に均一な温度の空気を供給し、冷暖房のムラを抑えるため、室温が安定しやすいのが特徴です。
部屋ごとにエアコンを使用する場合、暖房のある部屋とない部屋の温度差が大きくなりがちですが、全館空調なら廊下やトイレ、脱衣所なども含めて一定の温度を維持しやすくなります。
また、高気密・高断熱の住宅と組み合わせることで影響を受けることが減り、年間を通して心地よい室温を維持できます。

全館空調のデメリット

部屋ごとの調節が難しい

全館空調は家全体の温度を均一に保つ仕組みのため、部屋ごとに大きく温度を変えることが難しくなります。
例えば、家族の中で暑がりの人と寒がりの人がいる場合、家の温度に関して誰かが我慢しなければならないかもしれません。
最近は部屋ごとに温度調整できる高機能タイプの全館空調も登場していますが、導入コストがさらに上がることが多いのでよく検討しましょう。

また、暖房を使う冬は室内が乾燥しやすくなります。
エアコン同様に送風式のため、水分が奪われるからです。
家全体が暖かくなる分、湿度も下がるため、肌荒れや喉の乾燥を感じやすくなる人もいます。
加湿器を併用したり、加湿機能付きの全館空調を検討したりするなど、何らかの対策が必要になるでしょう。

導入費用が高め

全館空調の導入費用は、エアコンを各部屋に1台ずつ設置する方法と比べて高額になる傾向があります。
設備費に加え、ダクト工事などの施工費がかかるため、数百万円単位の予算がかかります。
新築の場合、設計段階から全館空調を組み込むことで、効率的な導入が可能です。
一般的な導入費用は約100~300万円で、建築時に設計を調整することで、コストを抑えられるケースもあります。

一方、リフォームで後付けする場合、既存の建物の構造や断熱性能によっては追加工事が必要となり、費用がさらに増加する可能性があります。
後付けの際の費用は約100~500万円が相場で、特にダクトの設置や断熱補強が必要な場合、大幅にコストが上がってしまうでしょう。
そのため、個別のエアコンを数台設置する場合と比較すると、全館空調の初期費用は大幅に高くなる点を考慮する必要があります。

故障時の影響と対策

空調機が故障すると、家全体の冷暖房が止まるリスクがあります。
部屋ごとにエアコンを設置している場合、故障した部屋では使用できなくなりますが、近いの部屋のエアコンで冷暖房を補うことはできるかもしれません。

しかし、全館空調では一つのシステムで家全体を管理しているため、一部の故障であっても広範囲に影響が及ぶ可能性があります。
また、修理には時間や費用がかかることがあるため、定期点検とアフターサービスが充実している工務店やハウスメーカーを選ぶことが大切です。

全館空調がおすすめなのはこんな方

家中の温度を快適に保ちたい方

全館空調は家全体を均一に冷暖房できるため、常に快適な温度を保ちたい方に適しています。
寒暖差のある場所を移動する負担を減らしたい場合にもおすすめです。
日中留守にすることが多く、帰宅後すぐに快適な環境で過ごしたい方にも向いています。

ペットを飼っている方

ペットは人間以上に気温や湿度の影響を受けやすい生き物です。
犬や猫は、暑さに弱い種類が多く、熱中症のリスクがあります。

また、寒さによって低体温症や消化機能の低下を引き起こすこともあります。
全館空調を導入することで、家のどの部屋でも温度・湿度を一定に保てるため、ペットの健康管理がしやすくなります。

花粉やハウスダスト対策をしたい方

全館空調のシステムには、高性能フィルター(HEPAフィルターやPM2.5対応フィルターなど)が搭載されている種類があります。
フィルターが花粉やハウスダストをキャッチするため、室内の空気を清潔に維持できます。
特に換気時の花粉の侵入を抑えたい方にとっては、効果的な対策となるでしょう。

全館空調のランニングコスト

電気代の特徴

全館空調は、高気密・高断熱の住宅に適したシステムであり、家全体を効率的に冷暖房できる設計になっています。
そのため、エアコンをこまめにオンオフするよりも、一定の温度で連続運転したほうが電気代を抑えられる場合があります。

電気代の目安

一般的に全館空調は効率的に運転できますが、電気代は地域や住宅の性能によって異なります。
寒冷地である札幌では、月々1~2万円程度かかるのが一般的です。
2024年1月の札幌市内40軒の実測データによると、全館空調システムの使用電力は17,205円。
これは札幌での事例であり、他の地域では低くなるでしょう。

電気代を抑える工夫

・適切な温度設定 (夏は28℃・冬は20℃)
・フィルターの定期清掃(ホコリの蓄積による効率低下を防ぐ)
・タイマー機能の活用(不在時の運転を調整し、無駄な消費を抑える)

寒冷地での対策

寒冷地では夜間の冷え込みが激しくなるため、断熱カーテンやシャッターを利用しましょう。
室内の温度変化を抑え、空調の負荷を軽減できます。

メンテナンス

全館空調のフィルターは、室内の空気を清潔に保つために重要な役割を担っています。
定期的にフィルターを清掃し、適切なタイミングで交換することで、空気の質を維持しながらシステムの効率を保つことができます。

フィルターが目詰まりすると、空気の流れが悪くなり、冷暖房の効率が低下するだけでなく、内部の部品に負担がかかる可能性があります。
全館空調を適切に運用するために、メーカーや専門業者が推奨する頻度で定期的にメンテナンスを行いましょう。

全館空調の相談はロゴスホーム


ロゴスホームは、高品質・高性能な住まいを適正価格で提供するハウスメーカーです。
北海道発の気候に合わせた住宅を提供しており、冷暖房・換気システムを用いて冬でも快適な暮らしを実現します。

ロゴスホームでは、お客様の要望に合わせた住宅を提案いたします。
これから全館空調の注文住宅を検討している方は、ぜひロゴスホームまでお気軽にご相談ください。

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まとめ

全館空調は、家全体の温度を均一に保ち、温度差が少なく、室内の湿度も安定させることができる空調システムです。
ヒートショック対策や省エネ効果などのメリットがある一方で、導入コストや部屋ごとの温度調節が難しいといったデメリットもあります。

また、ランニングコストとして電気代がかかる点や、万が一の故障時には家全体の冷暖房に影響が及ぶリスクがあるため、メンテナンス計画も考慮する必要があります。
メリットだけでなく、ライフスタイルや家族構成に合うかどうかを見極めることが重要です。
全館空調の導入を検討している方は、使用感やメンテナンス面を含め、信頼できるハウスメーカーに相談するとよいでしょう。