家を建てることは、多くの人にとって一生に一度の大きな決断です。
その過程で、建築コストを少しでも抑えることができれば、その分家族の将来のために使える資金が増えます。
幸いにも、国や自治体からは新築住宅を建てる際に活用できる補助金や税制優遇(減税)制度が提供されています。
本記事では、これから家を建てようと考えている方に向けて、どのような支援が受けられるのかを詳しく解説します。
どのような制度があるのかご紹介し、各制度の条件や補助額をまとめました。
賢くお得に家づくりを進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
家を建てる時に使える制度
新しい家を建てる際、大きな費用が必要となります。
国や自治体から提供される補助金、助成金、税制優遇などの制度を活用することで、この負担を軽減することが可能です。
新築住宅を建てる方を支援するため制度は大きく分けて以下3つに分かれており、それぞれの制度について解説します。
- 国による補助金、助成金、給付金
- 自治体による補助金・助成金
- 税制優遇(減税)制度
国による新築住宅の補助金・助成金制度
子育てエコホーム支援事業
「子育てエコホーム支援事業」は、子育て世帯・若者夫婦世帯の新築住宅の取得や住宅の省エネ改修などを行う際に受けられる補助金制度です。
この支援事業は、将来にわたって持続可能な住環境を育むことを目的としており、エネルギー消費を抑えることで光熱費の削減に貢献します。
対象となる方と新築住宅については、以下にまとめます。
【対象者】
・子育て世帯・・・申請時点において、2005年4月2日以降に出生した子を有する世帯です。※令和6年3月31日までに建築着工するものについては、2004年4月2日以降
・若者夫婦世帯・・・申請時点において夫婦であり、いずれかが1983年4月2日以降※に生まれた世帯です。※令和6年3月31日までに建築着工するものについては、1982年4月2日以降
【対象住宅・補助額】
・長期優良住宅・・・1住戸につき100万円
・ZEH住宅・・・1住戸につき80万円
【申請方法】
建築主に代わり、エコホーム支援事業者(ハウスメーカーなどの住宅事業者)が申請をします
※宅地建物取引業の免許を有する事業者からの購入に限ります。
※令和5年11月2日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手した住宅が補助対象です。
【申請期間】
2024年3月中下旬 ~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)
※参照元:子育てエコホーム支援事業
ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)補助金
ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)とは、高い断熱性能や省エネルギー設備を備え、年間を通じて消費するエネルギー量を自家発電で賄うことができる住宅のことを指します。
ZEHの推進は、地球温暖化防止とエネルギー消費量の削減を目的として国が進める政策の一環です。
このZEHを建てる際に活用できるのが「ZEH補助金」です。
【対象者】
ZEH基準を満たす住宅を新築する個人または事業者
【対象住宅・補助額】
補助金の額は、住宅の省エネルギー性能に応じて以下のように設定されています。
・ZEH・・・1住戸につき55万円
・ZEH+・・・1住戸につき100万円
・ZEH+ハイグレード[1]+[2]/[1]+[3]・・・1住戸につき110万円※
・ZEH+ハイグレード[1]+[2]+[3]・・・1住戸につき125万円※
※ハイグレード仕様選択条件
[1]外皮性能の更なる強化 [2]高度エネルギーマネジメント [3]電気自動車を活用した自家消費の拡大措置 |
【追加補助】
省エネ性能に応じた補助額に加え、以下の追加補助が可能です。
・蓄電システム・・・上限20万円
・直交集成板(CLT)・・・定額90万円
・地中熱ヒートポンプ・システム・・・定額90万円
・PVTシステム・・・65万円/80万円/90万円(方式、パネル面積により異なる)
・液体集熱式太陽熱利用システム・・・12万円/15万円(パネル面積により異なる)
【申請方法・申請先】
申請は、ZEHビルダーと呼ばれる認定を受けた建築事業者を通じて行う必要があります。
また、申請の際には、住宅の省エネルギー性能を証明する書類や計画書などを提出します。
【申請期間】
2024年4月26日から2025年1月7日まで
※参照元:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
ZEH補助金を活用すれば、初期投資の負担を軽減しながら、省エネルギー性能の高い快適な住宅を手に入れることができます。
これから家を建てる方は、ZEH補助金の活用を検討してみると良いでしょう。
給湯省エネ2024事業
給湯省エネ2024事業は、家庭でのエネルギー消費を抑えるための補助金制度です。
給湯分野に焦点を当て、高効率の給湯器の導入を支援します。
【対象者】
事業の対象となるのは、以下の2つの条件を満たす人です。
・対象機器を設置する住宅の所有者である
・給湯省エネ事業者と契約を締結し、新築注文住宅工事/新築分譲住宅購入/リフォーム工事/既存住宅購入のいずれかの方法で対象機器である高効率給湯器を導入する
なお、子育てエコホーム支援事業の新築に対する補助を受けた場合は、利用できませんので注意しましょう。
【対象住宅・補助額】
対象住宅は新築住宅および既存住宅です。
補助額は、設置する給湯器の種類によって異なります。
・家庭用燃料電池(エネファーム)・・・1台につき18万円
・電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)・・・1台につき10万円
・ヒートポンプ給湯器(エコキュート)・・・1台につき8万円
戸建住宅の場合、いずれか2台までが補助対象です。
さらに、それぞれさらに高い性能要件を満たす場合、最大5万円/台の加算補助を受けられます。
【申請方法・申請先】
申し込みは、住宅省エネ2024キャンペーンを通じて行われ、申請手続きは給湯省エネ事業者である各ハウスメーカーや工務店が担当します。
【申請期間】
2024年3月中下旬 ~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)
※参照元:資源エネルギー庁:給湯省エネ2024事業
これから家を建てる、またはリフォームを考えている方は、この補助金を活用して、省エネルギーな暮らしを実現させましょう。
LCCM住宅整備推進事業
LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅整備推進事業は、温室効果ガス排出量の削減を目的として、環境に優しい住宅の建設を支援する制度です。
この事業は、住宅のライフサイクル全体を通じてCO2排出量を削減することを目指しており、省エネルギー性能の高い住宅や再生可能エネルギーの利用、によりCO2排出量が収支マイナスになる住宅を支援対象とします。
【対象者】
戸建てのLCCM住宅を新築する人
【対象住宅・補助額】
LCCM住宅の認定には、高性能な基準を満たす必要があります。
・指定の強化外皮基準を満たしている
・再生可能エネルギーを除いて一次エネルギー消費量の25%削減されている
・再生可能エネルギーを導入している
など、11の性能基準をすべて満たすことが条件です。
詳細は、募集要領 、交付申請等マニュアルを参照しましょう。
・補助額・・・設計費および建設工事における補助対象工事の掛かり増し費用の合計額の2分の1
・補助限度額・・・1戸につき140万円です。
【申請方法・申請先】
申請は、公式サイトからの電子申請、もしくは担当工務店にご相談ください。
【申請期間】
令和7年1月20日まで。ただし、予算上限に達し次第終了予定。
補助金の額は、上限140万円/戸と高額のため、省エネ性能を重視した住宅建設を計画している方にとって、大きなメリットとなるでしょう。
※参照元:令和6年度サステナブル建築物等先導事業
自治体による補助金・助成金
各自治体では、地域の活性化や環境保全、家族支援のためのさまざまな制度を設けています。
特に、新築住宅を建てる際に利用できる自治体の補助金や助成金は、その条件や対象となるエリア、補助額が自治体ごとに異なるため、自分の住む地域や建築予定地の制度を事前に調査することが重要です。
北海道と岩手県の自治体で提供されている補助金・助成金の例を紹介します。
【北海道札幌市】札幌版次世代住宅補助制度
北海道札幌市では、2050年に温室効果ガスを実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指して「札幌版次世代住宅補助制度」を設けています。
この制度は、断熱性やエネルギー効率が基準を満たす住宅を新築する方に対し、補助金を交付するものです。
【対象者】
札幌市が設定した断熱等基準、サステナブル要件を満たす住宅を自ら居住するために新築する方
【対象住宅・補助額】
対象の住宅は、以下の2つの条件を満たす必要があります。
・札幌市内に新築する一戸建ての住宅で、令和6年4月以降に工事が完了していること
・断熱等基準の等級がシルバー以上の札幌版次世代住宅と証明を取得していること
補助額は、断熱基準に応じて以下のように設定されています。
・プラチナ・・・1住戸につき220万円
・ゴールド・・・1住戸につき180万円
・シルバー・・・1住戸につき60万円
各基準の詳細については、公式サイトをご参照ください。
【申請方法・申請先】
受付期間内に、登録申請書を郵送で提出します。
【申請期間】
令和6年度の補助金交付登録申請は予算上限に達したため、終了しています。
参照URL:札幌市:札幌版次世代住宅補助制度
【岩手県】住みたい岩手の家づくり促進事業
岩手県では、快適に暮らせる良質な住宅による居住環境づくりの推進のために、「住みたい岩手の家づくり促進事業」を実施しています。
この制度は、省エネルギー性やバリアフリー性能を備え、岩手県産木材を使用した住宅建築に対して、助成金を提供するものです。
【対象者】
対象となるのは、以下のいずれかに該当する方です。
・岩手県内に自ら居住するため、金融機関から住宅ローンの貸付けを受けて、住宅を新築する方
・岩手県内に自ら居住するため、県内に所有する住宅をリフォームする方
【対象住宅・補助額】
・断熱等対策等級4に適合する、性能証明書を取得した場合・・・10万円
・高齢者等配慮等級3に適合する、性能証明書を取得した場合・・・10万円
【申請方法・申請先】
岩手県木材産業協同組合まで、申請書類と必要書類を提出します。
【申請期間】
令和6年5月8日より、予算に達し次第受付終了予定。
参照URL:岩手県・住みたい岩手の家づくり促進事業
新築住宅を建てた時の税制優遇(減税)制度
住宅ローン控除
新築住宅を購入し、住宅ローンを組んだ際に受けられる税制優遇の一つが、住宅ローン控除です。
この制度を利用すると、年末の住宅ローン残高の一定割合が所得税から控除されます。
控除の適用期間は最大13年間と長く、新しい家の購入を検討している方にとっては非常に魅力的な支援策と言えるでしょう。
具体的には、年末時点での住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除されます。
つまり、住宅ローンの残高が多ければ多いほど、受けられる控除額も大きくなります。
ただし、この制度を利用するためには、一定の条件を満たす必要があります。
主な条件としては、新築住宅の取得後6ヶ月以内に入居すること、また、対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上であることなどが挙げられます。
また、住宅ローン控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
会社員の方でも、この控除を受けるためには、毎年の税金の確定申告が必須となるため、忘れずに行うようにしましょう。
この制度の魅力は、直接的な現金給付ではなく、税金の控除という形で恩恵を受けられる点にあります。
初期の住宅ローン返済の負担を軽減し、購入後の生活を少しでも楽にするための大きな支えとなり得ます。
家を建てる前に、このような税制優遇制度が存在することを知っておくと、より賢く、また効果的に新生活の計画を立てることができるでしょう。
参照元:国土交通省:住宅ローン減税
税制優遇(減税)制度
・登録免許税の軽減
新築住宅の購入や土地の取得時に必要な登録免許税は、通常不動産価格の一定割合で課せられますが、新築住宅に関しては特定の要件を満たすと、税率が軽減されます。
条件には、床面積50平方メートル以上の家屋などの要件があるため、事前に確認をしましょう。
【対象住宅】
・個人の住宅の用に供される床面積50平方メートル以上の家屋
・中古住宅の場合は、昭和57年1月1日以降に建築されたもの又は一定の耐震基準等に適合するもの
登記の種類 | 本則税率 | 特別税率 |
---|---|---|
所有権の保存登記 | 0.4% | 0.15% |
所有権の移転登記 | 2.0% | 0.3% |
抵当権の設定登記 | 0.4% | 0.1% |
※参照元:財務省:登録免許税に関する資料
・不動産取得税の軽減
不動産取得時にかかる不動産取得税も、新築住宅の場合は通常の4%から3%に軽減されます。
この税金は自治体によって徴収されるため、軽減の内容は地域によって異なることがありますが、多くの場合、新築住宅の購入者には有利な条件が設けられています。
※参照元:国土交通省・不動産取得税に係る特例措置
・固定資産税の軽減
新築住宅に対する固定資産税は、3年間(マンションなどの場合は5年間)、2分の1に減税されます。
また、新築の認定長期優良住宅については、固定資産税を5年間(マンションなどの場合は7年間)2分の1に減税する特例措置があります。
これらの税制優遇(減税)制度を活用することで、新築住宅の購入や建築にかかる費用を大幅に節約できる可能性があります。
計画段階でしっかりと確認し、賢く利用しましょう。
※参照元:国土交通省・新築住宅に係る税額の減額措置
まとめ
家を建てる際に利用できる補助金や減税制度は、将来の家計に大きな影響を与える可能性があります。
以下のポイントを押さえて、賢く制度を活用しましょう。
- 国による補助金・助成金制度:子育てエコホーム支援事業やゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)補助金など、省エネや環境に配慮した住宅建設を促進する補助金が存在します。
- 自治体による補助金・助成金:地域によっては、独自の補助金や助成金制度を設けている場合があります。自身が建築を計画している地域の自治体が提供している補助金・助成金を確認しましょう。
- 税制優遇(減税)制度:住宅ローン控除や登録免許税の軽減など、新築住宅を建てた時に適用される減税制度があります。これらを利用することで、購入後の経済的負担を軽減できます。
これらの補助金や減税制度をフル活用することで、初期投資の負担を軽減し、長期的には運用コストの削減にも繋がります。
家を建てる前に、これらの制度について詳しく調べ、計画に取り入れることが重要です。
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