マンションと一戸建て買うならどっち?費用面や住む時の違いを解説

マイホーム計画にあたり、マンションか一戸建てかによって、住み始めてからの暮らしは大きく変わります。
住宅を購入予定のすべての方は、新生活に対して期待するイメージをお持ちだと思います。

「子供たちと庭付きの一戸建てでのびのび暮らしたい」「スタイリッシュなマンションで都会的な生活をしたい」等々、こうしたイメージは住宅選びで大変重要な基準になりますが、家族が長く住み続けることになる高額な買い物である以上、より明確な基準で十分に比較検討したほうが良いでしょう。
ここでは、一戸建てとマンションのどちらを選ぶか迷っている方に向け、それぞれの特徴を比較してご紹介しています。

購入時と住み始めてからのコスト、住み心地などを、それぞれいくつかのポイントで比較しています。
マンションと一戸建てのどちらが、家族の暮らしに合っているかを考えるヒントにしてください。

マンション・一戸建てを比較

マンションと一戸建てでは、購入の流れから住み心地まで、あらゆるポイントで特徴が異なります。

マンション一戸建て
購入の流れ実物を見学し、住宅ローン審査を経て購入手続き。入居までの期間が短い。分譲はマンション購入の流れと似ているが、注文住宅は手続きが多く住むまでにも期間が必要。
購入費用物件自体の価格新築の場合は高額。中古物件は大きく値が下がる傾向。新築はマンションよりも面積が広く価格も低い。中古でも値が下がりにくい。
諸費用物件価格の3~8%物件価格の6~13%
ランニングコスト物件維持費修繕積立金が必要修繕費用は自己管理
固定資産税土地にかかる固定資産税が安い。軽減措置期間が長い建物にかかる固定資産税が安い
光熱費延床面積が小さい分安いZEHなど高い省エネ基準の場合は安くできる
駐車場代月々1万~数万円必要都心の狭小地でない限り不要
資産価値価値が下がっても「売れやすい」土地の価値は下がらない。ただし「売れにくい」
住み心地広さ70㎡以下が多い100㎡超が多い
日当たり・風通し物件によるものの、高層階や角部屋は開放感を出しやすい注文なら希望によって調整しやすい
セキュリティ面オートロック・防犯カメラ・宅配ボックス・管理人24時間常駐など、万全なセキュリティが一般的個人の設置判断にゆだねられる。万全な設備をつける家は少ない
近隣との騒音トラブル防音設計の建物が多いものの、小さなお子様や楽器の音には注意が必要マンションよりもトラブルになりにくい
生活設備24時間ゴミ出し可能な設備やWi-Fi環境などの共用設備が充実している物件もオーナーの意向や予算によってオプションを選択できる
買い物や移動が便利駅近・駅までのアクセスが良好な立地に建てられていることが多い郊外や住宅街に建てられる傾向。立地によっては車やバスの移動が必要。

次の章から、ひとつずつ詳しく解説していきます。

マンション・一戸建ての購入の流れを比較

マンションと一戸建てでは、購入のプロセスに違いがあります。
以下の表で、一般的な購入の流れをご確認ください。

マンションの場合一戸建て・分譲住宅の場合一戸建て・注文住宅の場合
1. 情報収集と物件探し
2. モデルルームまたは実際の物件の見学
3. 資金計画の立案
4. 購入申し込み ※人気物件の場合は抽選
5. 住宅ローンの事前審査
6. 売買契約の締結
7. 住宅ローンの本審査と契約
8.物件の引き渡し
1. 情報収集と物件探し
2. モデルハウスまたは完成物件の見学
3. 資金計画の立案
4. 購入申し込み ※多くの場合は先着順
5. 住宅ローンの事前審査
6. 売買契約の締結
7. 住宅ローンの本審査と契約
8.物件の引き渡し
1. 情報収集と土地探し
2. 土地の現地見学と施工例の確認
3. 資金計画の立案
4. 土地の購入申し込み
5. 住宅会社の選定と設計・見積もり
6. 住宅ローンの事前審査
7. 土地の売買契約
8. 建物の建築請負契約
9. 住宅ローンの本審査と契約
10. 着工、施工
11. 完成、引き渡し

マンションの場合は、中古・新築といったケースを問わず、どんな販売方法でも大まかな流れは変わりません。
一方、一戸建ては販売方法によって、大きく流れが異なります。
譲の一戸建てはマンション購入の流れに似ていますが、注文住宅は土地探しから始まり、ハウスメーカーと打ち合わせを経て完成にいたるまで、手続きが多いことが特徴です。

マンションと分譲住宅購入の流れでは、マンションの場合は人気物件でも抽選で買主が決定されることが多いのに対し、分譲一戸建ての場合は先着順で決まることが多い点が異なります。

住むまでの期間が短いのはどっち?

住むまでの期間が短いのは、マンション、もしくは一戸建ての分譲住宅です。
新築マンションや分譲一戸建てで完成済みの物件であれば、契約から数か月程度で入居が可能です。
一方、注文住宅の場合は、土地の購入から設計、施工まで含めると、1年以上かかることも。

住んだ後の暮らしをイメージできるのはどっち?

購入後の暮らしは、完成済みのマンションや分譲一戸建ての場合にイメージしやすいでしょう。
完成済みのマンション物件や分譲住宅の一戸建ては、実際の部屋を見学した上で購入を決定できます。

マンションでも新築で未完成の場合はモデルルームの見学になるため、実際の日当たりや眺望が異なる可能性があります。
一戸建ての注文住宅の場合は、パース図面などを活用してハウスメーカーと打ち合わせを重ね、理想の暮らしを想像します。

マンション・一戸建ての購入費用を比較

一戸建てとマンション、どちらを購入するにしても価格は重要な基準。購入価格と諸費用で比較してみましょう。
全国的な統計データから見ると、物件自体の価格は一戸建てのほうが安い傾向があり、諸費用はマンション購入のほうが安く抑えられる傾向があります。

物件自体の価格が安いのはどっち?

株式会社東京カンテイが公表している「マンションデータ白書2020」によると、首都圏の一戸建てとマンションの平均的な物件価格は次の通りです。

  • 新築一戸建て…3,997万円(平均専有面積:98.9㎡)
  • 中古一戸建て…3,258万円(平均専有面積:100.1㎡)
  • 新築マンション…6,055万円(平均専有面積:61.09㎡)
  • 中古マンション…3,487万円(平均専有面積:61.95㎡)

特に新築で比較すると、マンションより一戸建てのほうが圧倒的に安い結果となっています。安いにもかかわらず、一戸建てのほうが専有面積は圧倒的に広め。
新築購入時のコストパフォーマンスは、一戸建てのほうが良好と考えて良いでしょう。

なお、新築と中古という区分で比較した場合、マンションは中古が半値程度まで下がるものの、一戸建ては中古でも大きな違いがありません。物件価格だけを見れば、「新築一戸建て」の優位性が際立つ結果となります。
※参照:株式会社東京カンテイ「マンションデータ白書2020」から抜粋

諸費用が安いのはどっち?

不動産の購入時、物件価格とは別でかかるコストを「諸費用」と言います。具体的には、不動産仲介手数料や不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬、印紙税、ローン契約時の事務手数料などです。

マンションと一戸建て、それぞれのケースでは、以下のような諸費用がかかります。

費用項目新築マンション中古マンション分譲一戸建て注文一戸建て
不動産仲介手数料
不動産取得税
登録免許税
司法書士報酬
印紙税
ローン事務手数料
固定資産税精算金
修繕積立基金
火災保険料
水道負担金

(●:必要、△:必要な場合と不要な場合がある、-:不要)

物件種別や物件価格等により掛かる諸費用の額は変わりますが、物件価格に対して、概ね次のような諸費用率になるとされています。

新築一戸建て…6~10%
中古一戸建て…6~13%
新築マンション…3~5%
中古マンション…5~8%

4,000万円の新築一戸建てであれば240~400万円ほど、6,000万円の新築マンションであれば180~300万円ほどが諸費用の目安。諸費用については、一戸建てよりマンションのほうが安くなるでしょう。

マンション・一戸建てのランニングコストで比較

続いて、一戸建てとマンションについて、住み心地に関する基準で比較してみましょう。

物件維持費が安いのはどっち?

水回りの不具合、内壁の汚れ、給湯設備や冷暖房器具の故障などが見られた場合、快適な生活を維持するためにはコストを掛けて修繕・交換等を行わなければなりません。
一戸建てでもマンションでも、これらのコストはすべて家主が負担することとなりますが、マンションの場合、将来行う共用部(外壁や廊下、ベランダなど)の修繕に備えて毎月「修繕積立金」を支払わなければなりません。

もちろん、一戸建てでも実質的には「修繕積立金」に該当する予算を積立ていく必要があるため、一概にマンションの物件維持費のほうが高くなるとは言えません。

ただし、一戸建ての場合はお金がなければ無理に修繕を行わなくても構わない一方で、マンションの場合にはお金がなくても必ず毎月修繕積立金を支払う必要があります。その点において、一戸建てよりもマンションの物件維持費を負担に感じる方が多いようです。

固定資産税が安いのはどっち?

固定資産税については、ややマンションのほうが安くなる傾向があるようです。
一戸建ての固定資産税は、実存する建物と土地に課税される分かりやすい仕組みです。

一方でマンションの固定資産税は、専有している建物部分と、専有面積で按分計算された土地部分に課税されるため、土地部分の固定資産税は一戸建てより低めになる傾向があります。

また、専有している建物部分に課税される固定資産税は、減価償却期間の違いによりマンションのほうが高くなる傾向となりますが、
固定資産税の軽減措置適用期間は一戸建てよりもマンションのほうが長く設定されているという点も見逃せません。

まとめると、「土地にかかる固定資産税はマンションのほうが安い、建物にかかる固定資産税は一戸建てのほうが安い、固定資産税の軽減措置はマンションのほうが長い」ということ。固定資産税については、若干マンションのほうが安くなるのではないでしょうか。

光熱費はどっちが安い?

一般的には、平均延床面積が狭く気密性・断熱性に優れたマンションのほうが光熱費は安い、と言われています。

ただし近年では、マンションと同レベルの気密性・断熱性を持つ一戸建ても増えてきました。加えて、政府が推進しているZEH(※)も急速に普及していることから、
平均すればマンションのほうが光熱費は安い傾向があるものの、戸別で見れば一戸建てのほうが安いこともあります。

※ZEHとは
「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。高気密・高断熱による「省エネ」と太陽光発電などによる「創エネ」で、年間のエネルギー収支ゼロを目指す住宅のこと。

駐車場代はどっちが安い?

都心部などの狭小一戸建てを除き、一般的な一戸建てには駐車場が設けられています。そのため、別途で駐車場代がかかることはありません。

一方でマンションの場合、駐車場が必要な世帯はマンションの地下駐車場や近隣の青空駐車場などを別途契約する必要があるため、月々1万~数万円のコストがかかります。
仮にマンションの駐車場代が月2万円だった場合、実質的には住宅ローンの返済額が2万円増えるようなものです。何十年と暮らしていくことを想定すれば、大きな出費となるでしょう。

マンション・一戸建ての資産価値で比較

せっかく購入した住宅でも、一生涯住み続けるかどうかは分かりません。将来的に売却する可能性も考慮し、一戸建てとマンションの資産価値を比較してみましょう。

将来的な資産価値が高いのはどっち?

結論から言うと、将来的な資産価値はマンションより一戸建てのほうが高くなるでしょう。
マンションの場合、綿密な市場調査から万人受けする設計・デザインが選ばれるため、将来売却する際に一戸建てより「売れやすい」ことは確かです。
一戸建てより利便性の高い立地であることも多いため、その分の付加価値で価格が高くなることもあるでしょう。

一方で一戸建ての場合、特に注文住宅は施主の意向が強く反映されているため、万人受けしにくくマンションより「売れにくい」傾向があります。
利便性よりも住環境を重視した場所が選ばれることもあるため、その点で売れにくくなる側面もあるでしょう。

ただし、マンションも一戸建ても建物自体は年数とともに劣化していくことに対し、一戸建ての土地は劣化することがありません。不動産市況によっては、購入時より値上がりしている可能性すらあります。
売却時の土地価格を加味すれば、将来的な資産価値はマンションより一戸建てのほうが高いと言えるでしょう。

マンション・一戸建ての住み心地で比較

一戸建てとマンションについて、まずは住み心地に関する基準で比較してみましょう。

広いのはどっち?

住宅金融支援機構が公表している「2021年度 フラット35利用者調査」によると、全国の平均的な住宅面積は広い順に次の通りです。

  • 注文住宅…123.8㎡
  • 中古戸建て…113.1㎡
  • 土地付き注文住宅…111.4㎡
  • 建売住宅…101.8㎡
  • 中古マンション…68.2㎡
  • マンション…64.7㎡

ご覧の通り、マンションに比べると一戸建てのほうが住宅面積は広めです。
中古や建売も含め、一戸建ての住宅面積は平均100㎡超。一方でマンションは、中古も新築も70㎡以下です。その差は30㎡超(約20畳)。
実に、大きめのリビング1室、または6畳×3室ほどに該当するほどの面積の違いがあります。

もちろん、マンションの中にも広い物件は多々ありますが、一般的には一戸建てのほうが広さを確保できる傾向がある、と考えましょう。
※参照:住宅金融支援機構|2021年度 フラット35利用者調査

日当たり・風通しが良いのはどっち?

日当たりや風通しについては、一概に比較できません。
リビングに大開口を設置し、屋内のあらゆる場所に窓を設置すれば、一戸建ての日当たりや風通しは大変良くなるでしょう。

一方でマンションでも、特に階数の高い物件や角部屋などであれば、一戸建てに負けないほどの日当たり・風通しが期待できます。
日当たり・風通しの良さは、一戸建てかマンションかで決まるものではなく、物件の設計や方角によって決まると考えておきましょう。

なお、高層マンションの上階であれば、眺望の良さから心理的な開放感を得られます。一戸建てにはない魅力と言えるでしょう。

セキュリティ面が安心なのはどっち?

一般的に、セキュリティ面では一戸建てよりマンションのほうが高いとされています。
近年のマンションでは、オートロックや防犯カメラ、宅配ボックスなどの設置が一般的。
管理人が24時間常駐している大型マンションなども珍しくありません。

一方、一戸建てにもオートロックや防犯カメラ、宅配ボックスなどを設置することは可能ですが、まだ一般的とは言えません。外部からの死角が多い一戸建てなどでは、空き巣被害のリスクも高まるでしょう。

近隣との騒音トラブルが少ないのはどっち?

近隣との騒音トラブルについては、マンションよりも一戸建てのほうが少ないと考えて良いでしょう。
マンションの場合、構造上は上下左右の世帯と区切られているものの、壁・天井・床を挟んで隣家と接しています。

大半のマンションは防音設計となっていますが、小さなお子様のいる世帯などでは、騒音を出さないよう十分に配慮する必要があるでしょう。
楽器を習っているお子様がいる場合、音量を抑える必要があるかもしれません。

一方で一戸建ての場合、隣家と壁・天井・床が接しているわけではないので、その分、騒音で隣近所に迷惑をかける可能性は少なくなります。
隣家との距離が離れている場合には、通常通りの音量で楽器演奏を楽しめるかもしれません。

生活設備が充実しているのはどっち?

生活設備については、一戸建てとマンションという分け方で比較はできません。一戸建てとマンションのどちらにも標準仕様の設備はありますが、
グレードアップしたい場合には有料オプションとなるため、オーナーの意向や予算が生活設備の充実度を左右すると考えましょう。

なお、マンションの中には、24時間のゴミ出し設備やWi-Fi環境などの共用設備が充実している物件もあります。これら共用設備の充実は、一戸建てにないマンションの魅力と言えるかもしれません。

買い物や移動が便利なのはどっち?

買い物や移動については、一戸建てよりマンションに優位性があるでしょう。
一般的に、マンションは駅近または駅までのアクセスが良好な場所に建てられます。駅周辺にはスーパーやコンビニなども多い傾向があることから、日用品の買い物にも不便はないでしょう。

一方で一戸建ては、駅からやや離れた郊外や住宅街に建てられる傾向があります。閑静で住みやすい場所ですが、駅へのアクセスや買い物にはバスを利用しなければならないかもしれません。

【まとめ】「どちらが有利か」ではなく「何を大切にしたいか」が大事

一戸建てとマンションのどちらを選ぶべきかお悩みの方に向け、購入の流れ、住み心地・購入価格・ランニングコスト・資産価値の5つの基準で両者を比較してみました。
マンションと一戸建ては同じ「マイホーム」ではあるものの、それぞれの特徴は大きく異なることをご理解いただけたでしょう。

どちらを選ぶべきかお悩みの方は、「どちらが有利か」ではなく「何を大切にしたいか」という考えからスタートしてみてはいかがでしょうか。
例えば、子供やペットなどとの余裕ある暮らしを大切にしたいならば、一戸建てを中心に検討してみても良いでしょう。また、職場までのアクセスや日常生活の利便性を大切にしたいならば、マンションを中心に検討してみるのがおすすめです。

これから何十年と住むことになる大切なマイホーム。ライフステージやライフスタイル、価値観、家族構成などが変化する可能性も考慮し、長い目で世帯に合った住宅を選んでみてください。