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住宅ローン選びで重要な検討要素になる金利。この金利の変動に大きく影響を与えるのが短期プライムレートです。変動金利と固定金利のどちらを選ぶか迷っている人は、短期プライムレートの動向をチェックしたり、住宅ローンにどんな影響を与えるのか知っておくと良いでしょう。
本記事では、短期プライムレートの基本知識や変動金利との関係、仕組み、過去の推移、また今後の短期プライムレートの見通しなどについて詳しく解説します。
短期プライムレートとは
短期プライムレートは、住宅ローン金利の変動に大きな影響を与える指標です。ここで、抑えておきたいポイントを以下にまとめました。
・信用度の高い企業に向けた短期の最優遇貸出金利
・変動金利の基準
・市場金利の金利動向を反映
- 短期プライムレートの大きなポイントは、民間の金融機関が信用度の高い企業に貸し出す、貸出期間1年未満の最優遇貸出金利であることです。信用度の高さは、財務状況が良好であるかどうかで判断されます。
また、住宅ローンにおける変動金利は短期プライムレートがベースとなっています。短期プライムレートに対し、1年以上の長期貸付に適用されるのが長期プライムレートです。一部の住宅ローンでは、短期プライムレートに一定の利率を上乗せした“新長期プライムレート”が長期貸付に採用されるケースもあります。
そして、短期プライムレートは資金調達コストや市場動向をもとに金融機関が独自で決定しているのもポイントです。
短期プライムレートの基本知識
もともと短期プライムレートは、日本銀行が定める公定歩合に連動して決まっていました。公定歩合とは、中央銀行が金融機関に貸し出す際の金利です。短期プライムレートは、この公定歩合に連動するのが一般的でした。
ところが、1980年代後半から日本の金融が自由化されたことで、短期プライムレートは公定歩合から独立するようになり、それぞれの金融機関が独自の判断で設定するようになりました。
現代の短期プライムレートは、市場金利の変動に敏感に反応し、より市場性の高い金利体系を指すのが特徴です。一般的に、各金融機関は自社ホームページなどで短期プライムレートを公表しているため、公的歩合と連動していた過去の短期プライムレートとは異なり、透明化されています。
短期プライムレートと長期プライムレートの違いを比較
短期プライムレートと長期プライムレートの違いについて、以下の比較表でまとめました。
短期プライムレート | 長期プライムレート | |
貸付期間 | 1年未満 | 1年以上 |
変動頻度 | 比較的変動性が高い | 比較的変動性が低い |
金利の決まり方 | それぞれの金融機関が市場金利動向や自社の資金調達コストを勘案し、独自に決定 | それぞれの金融機関が市場金利動向や自社の経営状況などを勘案し、独自に決定 |
短期プライムレート、長期プライムレートはどちらも優良企業向けの優遇金利ですが、貸付期間や変動の頻度、決まり方などがそれぞれ異なります。住宅ローンを選ぶ際には、それぞれの違いや自身のライフプラン、経済状況に合わせて慎重に検討することをおすすめします。
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短期プライムレートはどのようにして決まる?
各金融機関が決定する短期プライムレートについて、決定要因となるポイントをまとめました。
・金融機関の経済状況
・市場動向
・日本銀行の政策金利
金融機関の経済状況としては、資金調達コストや貸し出す企業への信用度、経済状況、リスクなどが挙げられます。また、競合他社の金利設定も短期プライムレートの決定に影響するケースも珍しくありません。
そして、市場動向には、短期資金の貸し借りの基準となる無担保コールレート、市場全体の金利水準に反映される国債の利回り、またCDレート(譲渡世預金証書金利)やユーロ円金利などが挙げられます。
さらに、短期プライムレートは日本銀行が設定する政策金利や金融緩和や引き締めに影響されやすいです。日本銀行の政策金利が引き上げられれば、市場金利とともに短期プライムレートも上昇します。また金融緩和政策により市場に資金が共有されれば金利が低下しやすくなりますし、金融引き締め制作により市場から資金が引き揚げられれば金利も上昇しやすくなります。
このように、短期プライムレートはさまざまな要因が複雑に絡み合って決定されるのが特徴的です。
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変動金利と短期プライムレートの関係
住宅ローンにおける変動金利は短期プライムレートが基準となるため、短期プライムレートが上昇すると変動金利も上昇し、短期プライムレートが低下すると変動金利も低下するのが一般的です。
本記事の「短期プライムレートの推移」では、変動金利と短期プライムレートの連動性を詳しく紹介しているので参考にしてみてください。
変動金利の見通しは、短期プライムレートをチェックするのが最も効率的です。
短期プライムレートが変動金利に与える影響を探る
変動金利は短期プライムレートの上昇や下降に連動して変動するのが基本ですが、短期プライムレートの連動幅が変動金利の変動幅に直結するわけではありません。というのも、変動金利は各金融機関が設定する店頭金利や契約内容によって影響されることがあるからです。
たとえばある銀行の変動金利が“短期プライムレート+1.0%”と設定されるとしましょう。短期プライムレートが0.5%の場合、変動金利は1.5%になります。また、短期プライムレートが1.0%に上昇した場合には変動金利が2.0%に上昇します。
このように、短期プライムレートの変動に合わせて銀行の変動金利も上昇するのです。
短期プライムレートの変動が住宅ローンに与える影響を理解する
ここで、短期プライムレートの変動が住宅ローンの金利にどう影響を与えるのか具体例をもとに解説しましょう。
【具体例】
・3,000万円の住宅ローンを35年で借り入れ
・銀行が設定しているのは“短期プライムレート+1.0%”
・現在の短期プライムレートが0.5%
以上の条件により、毎月の住宅ローン返済額は約9万円(短期プライムレート0.5%+店頭金利1.0%)となります。
ところが、途中で短期プライムレートが1.0%に上昇すると、金利は2.0%となるため毎月の住宅ローン返済額が約9.5万円に増加します。短期プライムレートがわずか0.5%上昇するだけでも、毎月の返済額が5,000円ほど増えるのです。
金利がわずかに上昇しただけでも総返済額に大きな差が生じる住宅ローンの変動金利ですが、実は短期プライムレートと店頭金利から、さらに優遇金利が差し引かれるケースがあります。詳しくは次の章で解説します。
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短期プライムレートの仕組みを理解する
短期プライムレートを基準とした変動金利は、以下の方法で計算することが可能です。
変動金利の計算方法 | 「短期プライムレート」+「店頭金利」-「優遇金利」 |
各金融機関が設定する店頭金利は、金融機関の経営状況やリスク評価などをもとに決まるのが一般的です。一方、住宅ローンを利用する際には短期プライムレートと店頭金利から各金融機関の優遇金利が差し引かれたものが変動金利となります。
たとえば店頭金利が2.475%でも、優遇金利が1.8%なら実際の金利は0.675%が適用されます。優遇幅が大きいほど住宅ローンの返済額負担が軽減できるのは大きなポイントです。
また、短期プライムレートが変動してすぐに変動金利が変わるわけではありません。変動金利は半年ごとに見直されるのが一般的だからです。ただし、金融機関によって見直し時期が異なるケースもあるため、契約内容の確認をおすすめします。
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短期プライムレートの推移
以下は、民間金融機関の住宅ローン金利推移をグラフで表したものです。
(フラット35パンフレットより引用)
変動金利に影響する短期プライムレートの推移は、日本銀行のホームページで公開されています。上記の図が示しているとおり、主要銀行の変動金利は2009年以降2.475%のままです。これは2009年1月9日からグラフの2024年2月時点までの間、短期プライムレートは1.475でほぼ固定されているからです。
一方で2024年9月、日本のメガバンクが約17年ぶりに短期プライムレートの引き上げを検討していると発表し、実際に短期プライムレートが上昇しました。これにより、今後の変動金利に影響を与える可能性があります。
ここで、過去の短期プライムレートの変動や最近の動向、今後の見通しについて考えていきたいと思います。
過去の短期プライムレートの変動
1970年代の短期プライムレートは現代に比べて遥かに高く、1973年には6.25%〜9.25%の範囲で推移していました。これは高度成長期によるインフレーション、1973年のオイルショックで急激なインフレーションが起きたことに影響しています。
1990年代前半の短期プライムレートは4〜8%程度でしたが、金融緩和政策により金利が低下すると、1990年代後半には1.5%台にまで下がりました。
そして2001年以降、短期プライムレートは1.5%台で推移し、リーマンショック後の2009年1月9日以降は1.475%でほぼ固定しています。このように、短期プライムレートは過去40年間で大きな変動を見せています。
最近の短期プライムレートの動向
2023年から2024年9月以前の短期プライムレートは、1.4%から1.8%の範囲でわずかながら変動していますが、基本的に1.475%が基準となっています。これは、超低金利により金融機関の収益環境が厳しくなり、これ以上企業向けの貸出金利を下げる余地がないことが考えられています。
しかしながら、2024年9月以降は主要銀行の短期プライムレートが上昇し始めました。2024年9月2日から三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行の短期プライムレートは1.475%から1.625%に。そして住信SBIネット銀行は2024年10月1日から1.775%から1.925%に上昇しています。
銀行名 | 期間 | 短期プライムレート | 参照 |
三菱UFJ銀行 | 2009年1月13日~ 2024年9月2日~ |
年1.475% 年1.625% |
短期プライムレート円預金金利及び短期プライムレートの改定について |
三井住友銀行 | 2009年1月13日~ 2024年9月2日~ |
年1.475% 年1.625% |
短期プライムレート短期プライムレートの引き上げについて |
みずほ銀行 | 2009年1月9日~ 2024年9月2日~ |
年1.475% 年1.625% |
短期プライムレート短期プライムレートの改定について |
住信SBIネット銀行 | 2008年11月17日~ 2024年5月1日~ 2024年10月1日~ |
年1.675% 年1.775% 年1.925% |
短期プライムレート改定履歴 |
これは、日本銀行の金融政策決定会合の結果(短期金利を0.25%程度引き上げ)と市場金利の上昇が影響していると考えられるでしょう。
※参照:日本銀行ホームページ「2024年7月金融政策決定会合での決定内容①」
今後の短期プライムレートの見通し
2024年7月にゼロ金利政策が解除されたことで、主要銀行が一部地方銀行が短期プライムレートを引き上げました。これにより、今後は多くの銀行が同じくらいの水準まで短期プライムレートを引き上げると予想されています。
当然、短期プライムレートの引き上げに伴い変動金利が上がると思われます。すぐに金利が上がるわけではないものの、早くて2025年の1月2月、または春くらいに変動金利が変わる可能性があるでしょう。
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住宅ローンにおける変動金利のメリットとデメリットを検証
住宅ローンにおける変動金利のメリットとデメリットを以下の表にまとめました。
メリット | デメリット | |
変動金利 | ・金利が低い時期には固定金利より低金利で借り入れできる可能性がある ・金利の低下により返済額が減る可能性がある |
・金利の上昇により返済額が増える可能性がある ・金利変動により心理的な負担も懸念される |
ここで、変動金利による住宅ローンの影響についてもう一度見てみたいと思います。
たとえば借入額3,000万円で返済年数35年の場合、金利が0.5%から0.65%上昇すれば、毎月の返済額が2,005円ほど増額します。人によっては「これくらい許容範囲」と感じることもあるかもしれません。
これから住宅ローンを組む人にとっては、今後どのくらい変動金利が上がるのかが判断軸となるでしょう。一方、固定金利は金利上昇のリスクを銀行が負担しているため、高く設定されているのに代わりはありません。
短期プライムレートの上昇により「変動金利より固定金利が得なのでは?」と考えるのも無理はありませんが、きちんと計算したうえでどちらが得になるかしっかりと検討することをおすすめします。
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まとめ
短期プライムレートは、住宅ローンの金利変動に深く関わっています。短期プライムレートの動きをチェックすれば、金利上昇の可能性を探ることも可能です。これから住宅ローンを組む場合は、変動金利と固定金利それぞれで返済額をシミュレーションし、ライフプランに合わせて検討するとよいでしょう。現在変動金利で住宅ローンを利用している人は、場合によって借り換えた方が良いケースもあります。住宅ローンに関するご相談は、ロゴスホームまでお気軽にお尋ねください。
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